スーさんのいえづくり

古民家リノベーションで理想の暮らしを叶えるブログ

自分たちで理想のリノベーションの間取りを考えるための基礎知識

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リノベーションをしようと思ったら、どんな間取りがいいのか、わくわくしますよね。

 

でも、なんでも出来る新築とは違って、リノベーションには制約がつきものです。

構法によるのですが、動かせない柱や梁、壁などもあり、素人では判断できないことが多々あります。

 

まずは業者の提案を受けながら、優先順位をつけて考えていくのがセオリーだと思います。

 

 

わたしもふだんの仕事では新築の住宅しか扱わないため、リノベーションの進め方については少し悩みましたが、

建築士の資格もあり 仕事で扱っている木造であればある程度の知識はあるので、今回は自分たちで間取りを考えることにしました。

 

信頼できる業者さんにすべてお任せできるのが1番楽ですが、相談する前に自分で考えたい!という方向けに、間取りを考える上での基礎となるポイントをまとめます。

 

 

 

 

 

 

抜ける柱、抜けない柱(壁)について理解する

 

構法によるちがいを理解しよう

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リノベーションをする時の柱や梁の動かしやすさは、建てている構法に大きく依存します。

木造の在来工法であれば柱と梁で建物が構成されているので比較的リノベーションしやすいです。

 

荷重は梁、柱、と上から順番に伝わってくるため、“どこを伝わって力がかかるんだろう?”という考え方で構造を理解すれば柱や梁の架け替えも可能です。

 

部分的に筋交いや火打ち等の補強が必要になりますが、全体のバランスを見てですが変更もできます。

 

 

 

ツーバイフォー構法や、その他パネル構法と呼ばれる構法は、壁そのもので耐力を持たせているため、穴を開けることも難しく、リノベーションの自由度は低めです。

 

この場合は窓やドアの位置を含めて、間取りの大きな変更はしにくいので、既存の間取りをうまく利用する方向で考える必要があります。

 

 

 

鉄骨造や鉄筋コンクリート造という構造もありますが、今回は木造戸建住宅のことを書くので省略します。

(もちろん、戸建でもこの構法で建てられる方もいらっしゃいますが、古民家の場合はほとんど木造なので。)

 

 ここでは今回のリノベーション物件と同じく、木造在来構法を基準に話を進めます。

 

 

抜けない柱の見抜き方

実際のところは解体をしてみないとわかりませんが、解体前でもある程度抜けない柱については目星をつけることが可能です。

 

ポイントは、荷重がかかる順番です。

必ず上から下に伝わっていきますので、より多くの力を受けている構造材ほど、移動が難しいと思ってください。

 

つまり、2階の柱より1階の柱の方が抜きづらいということです。

なんとなくイメージは湧きますよね。

 

在来構法の場合、”本当に抜けない柱”は下記の2点くらいであまり多くありません。 

 

 

建物四隅の柱

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これはわりと簡単にイメージができると思います。

建物四隅の柱は構造を作る上で基本中の基本なので、抜くことはできません。

 

たまに抜いている家もありますが、それは新築ならでは。リノベーションの場合はできないと考えて良いでしょう。

 

基本的には四隅の柱に両側の梁が引っかかる構造になっていますし、

特に昔の家は特に通し柱になっていることも多く、現実的ではありません。

 

 

4メートル以内のスパンにある柱(特に外周部)

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在来構法の木造では、柱〜柱までの距離がおおよそ4m(木造の単位である910mmピッチでいくと4.5スパン分)程度が構造上の限界です。

基本的にはこのピッチごとに柱を建てる必要があります。

 

例外として、大きな梁せい(梁の高さ)の構造材を使用したりすることでそれ以上のピッチを飛ばすこともあります。

(今回の物件もなんと驚きの6スパン飛んでいます。梁は50センチ近くありとても大きい!)

 

実際は外周部でなければ大きな梁を使えば架けかえることも完全に不可能ではないので、こちらは業者に相談してみる価値はあります。

 

 

柱を移動する方法

さて、抜けない柱についてはあまり多くない、と書きました。

それらは残す方向で考えるとして、“抜ける柱”だからと言ってなんでもかんでも自由にできるわけではありません。

 

移動するには、代わりとなる柱(梁)をかける必要があります。

 

今回のリノベーションでは、和室入り口の柱が邪魔になってしまうため、梁の架けかえを行っています。

どういう風に考えれば大丈夫なのか解説します。

 

例えば下記の部分の柱を抜く場合。

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冒頭で触れたように、構造の架け替えの際は、荷重が伝わっていく順番を追っていくことがポイントになります。

 

この場合、黄色い柱は梁から荷重を受けているので、抜く時には代わりに荷重を受けてくれる材料が必要です。

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たとえば⇩こんな風に、既存の梁の下により大きい梁をかけ、荷重を左右の柱に伝えていくのも1つの方法です。

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このような考え方で補強をしていくことによって、柱や梁の架け替えは可能です。

 

ただし、補強には基本的に大きな補強材が必要になってくるので、その分天井高さが低くなってしまったりすることもあるので注意しましょう。

 

 

 

現状の生活の問題点を理解する

構造の基本的な考え方がわかったら、いよいよ楽しいお話です。笑

 

夢が広がる、間取りを考える時間です!

 

インターネットには素敵な間取りや素敵な写真がたくさんあふれています。

広々としたダイニングキッチン、間接照明が効いたリビング、柔らかな光が差し込む吹き抜け玄関、、、など、おしゃれで憧れるような写真が山ほどあります。

 

あれもこれも採用したくなるところですが、もちろん金銭的な制約もありますし、リノベーションの場合はそこに前述の構造の問題も絡んできます。

 

新築以上に、優先順位をはっきりさせて考えることが大切です。

 

ここではその優先順位のつけ方についてまとめます。

 

 

現状の生活での不満点について考える

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いいところをどんどん採用したくなるのはわかりますが、実は不満を潰すこのプロセスの方が重要です。

(もちろん、夢のマイホームですから、やりたいことはやるべきです。それは次のステップに!)

 

でも、家づくりの時はつい舞い上がってしまうもの。

結果的に「もっと考えておけばよかった!」ということにならないように、まずは冷静になって、マイナスを消すことに徹しましょう。

 

 

まずは不満点をとにかく書き出そう

まずはこれです。

今の住まい、今まで住んだことのある住まいで、不満に感じたことを書き出していきましょう。

 

 

・断熱性能が悪くて冬がすごく寒い

・玄関が狭くて靴が常にあふれている

・LDKが広すぎてエアコンの効率が悪い

・キッチンの幅が狭くて夫婦で料理ができない

・換気扇が汚れやすくお手入れが大変

・外部に水道がなく庭に水やりができない

・トイレがリビングの横にあって音が気になる

・コンセントが足りなくてタコ足配線が多すぎる

・カビっぽくてジメジメする

・リビングに入るとキッチンの手元が丸見えになってしまって恥ずかしい

などなど。

 

人によって、いろいろな不満点があると思います。

とにかく気になることはなんでも書き出してみましょう。

 

 

 

優先順位を考えよう 

一通り書き出せたら、その中で最も重要視することはなんなのか、トップ5くらいまで考えてみましょう。

 

自分の中の気持ち整理をすることが重要なので、とにかくじっくり考えてください。

 

もし、引越しを検討されたことがある場合は、「なぜ引っ越したくなったのか?」という理由を思い出してみるのもいいと思います。

 

私の場合は、(今はマンション暮らしなのですが)

・西向き窓で かつ隣家の影になり、冬は陽が入らなくて寒い

・陽が入らないので暗く、冬は朝から電気をつけなければならない

・収納が少なく、洋服や靴が入りきらない

・お風呂が狭く、湯船のお湯もすぐ冷める

 

このくらいでしょうか。

今のマンションはわりと気に入っているので、そもそもあまり不満の数は出ませんでした。笑

 

ただ、日当たりの悪さは唯一どうしても不満です。

 

"次引っ越すなら日当たりのいい家”

これが私たち夫婦の絶対条件となりました。

 

 

不満点の分類をしよう

不満点と、優先順位が絞られてきたら、ざっくりで良いので分類をしてみましょう。

分類するのは、日当たり・音(遮音性)・設備・断熱・収納 この5つです。

 

例えば我々の例でいくと、

 

・西向き窓で かつ隣家の影になり、冬は陽が入らなくて寒い →断熱

・陽が入らないので暗く、冬は朝から電気をつけなければならない →日当たり

・収納が少なく、洋服や靴が入りきらない →収納

・お風呂が狭く、湯船のお湯もすぐ冷める →設備

 

こんなふうに分類されます。

これらはそれぞれ、こんなふうに解決していく必要が有ります。

 

日当たり…窓の大きさ、数を変える

音(遮音性)…素材を変える、断熱材(吸音材)を入れる

設備…最新設備を導入する

断熱…断熱材を入れる

収納…間取りを変える、収納を増やす

 

とってもざっくり、シンプルな解決方法を記載しました。

ここに個々の物件ごとの制約が絡んでくると思いますが、概ね上記のポイントごとにリノベーションの優先順位を考えていくことになります。

 

 

優先順位の高いものから解決策に取り掛かろう

すごく当たり前のことを書いていますね。笑

でも、このプロセスを踏むことで、自分の中での不満点が明確になります。

 

リノベーションの場合、新築とは違って制約があるため、大きな不満点を消すことから順番に考えないと、後々からでは調整が効かなくなってしまうこともあるので大切です。

 

日当たりが絶対条件であれば、南向きに大きな窓をつくることからスタート。

お風呂の狭さやキッチンの幅が不満であれば、それを確保できる大きさがどこなのか探していく必要があります。

 

設備の仕様やコンセントの数は後々でも構いませんが、間取りを考える上で確保したい大きさの優先順位については自分の中で明確だと良いでしょう。

 

我々の場合、

・西向き窓で かつ隣家の影になり、冬は陽が入らなくて寒い

 →南側に大きな窓をつくる。内壁や天井を全て剥がし、断熱材を全体に充填する。

・陽が入らないので暗く、冬は朝から電気をつけなければならない

 →南側に大きな窓をつくる。

・収納が少なく、洋服や靴が入りきらない

 →3畳程度のWICをつくる。30足程度収納できる靴箱をつくる。

・お風呂が狭く、湯船のお湯もすぐ冷める

 →保温性の高い浴槽にする。

 

このように考えました。

特に南側に大きな窓をつくることは、後からでは対応できませんし、かなり重要です。

 

 

間取りに絡むものを見分けよう

また、優先順位の低いものでも、間取りに影響するものはこの段階で見ておく必要が有ります。

特に下記の○事項に分類されるものは絡みやすいところなので要注意です。

 

△日当たり…窓の大きさ、数を変える

△音(遮音性)…素材を変える、断熱材(吸音材)を入れる

設備…最新設備を導入する ⇦浴室の広さ、キッチンの広さという欲しい大きさを明確に!

△断熱…断熱材を入れる

収納…間取りを変える、収納を増やす ⇦収納したいもの、場所を明確に!

 

 

ほしい部屋の大きさ、収納の数、設備の大きさについては目安を考えておきましょう。

 

最初のステップで書き出したもののピックアップせずに終わった小さな不満たちについても、ある程度プランが固まってきた段階で見直してあげると、漏れがなくなるのでおすすめです。 

 

 

現状の老朽状況を確認する

これは本来であれば記事のトップに書き出すべき項目なのですが。

リノベーションでは、建物そのものの老朽度合いを確認し、適切に補修することも大切です。

 

特に木造住宅ではシロアリの被害や、水回りの構造材の腐敗などが深刻な場合もあります。

 

今回は“自分で”考える時の記事なので割愛しますが、ここは安易に判断せず、きちんと専門家の業者の判断を仰ぎましょう。

 

 

理想の生活スタイルを考える

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ここで初めて、理想を語る時間になります!

 

新築の場合、基本的な部屋の大きさを考えて組み合わせていくこともポイントですが、リノベーションの場合は家の大きさもだいたいの骨格も決まっているので部屋を大きさで区切って考えるには融通が利かず、あまり意味はありません。

 

玄関の位置など、変えづらいポイントもあるので、前項の不満の解消と、動線と収納力の確保に絞って考えたほうが賢明です。

 

 

まずは生活スタイルのイメージを掴もう

いろいろな妄想がふくらむと思いますが、ここではあくまで、 "どんな生活を送りたいのか”というイメージをつかむことが大切です。

 

メインターゲットを絞って考えるのもわかりやすいです。

 

・どこにいても子供の様子がわかる、子育てしやすい生活

・家事がラクになる、主婦が喜ぶ生活

・仕事から帰ってきたときにホッとできる、共働き夫婦のための生活

 

 

だれのための?をはっきりさせることで、力を入れるべきポイントを明確にすることが目的です。

 

理想をつめこむのは、あくまでも不満解消の後!

あまり細かい要望を出してしまうと不満解消がおろそかになってしまうので、この段階ではざっくりした理想の生活をイメージする程度に留めておきましょう。

 

その上で生活動線、家事動線、収納について考えていきましょう。

細かい要望については書き出しておくのはいいことですが、どうしても譲れない理想(どうしてもアイランドキッチンがいい!等)以外はいったん保留とします。

 

 

 

おわりに

今回の記事は、あくまでも『自分で』考えるときの【基礎知識編】です。

ほとんどの方は間取りも含めて業者に依頼するかと思うのですが、自分の生活の不満点や理想を整理しておくと人に伝える時もスムーズです。

 

ぜひ、一度試してみてください。

 

細かいポイントについては実際の間取りも含めて、改めてご紹介します!