スーさんのいえづくり

古民家リノベーションで理想の暮らしを叶えるブログ

【“もしも”の時に一番困るのは生活用水の確保】井戸を残して災害に備えよう

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こんにちは、スーです。

 

突然ですが“井戸”ってどんなイメージでしょうか?

 

わたしはトトロのサツキちゃんとメイちゃんが野菜を洗っている光景が目に浮かびます。

 

実家も井戸があり日常的に飲料水としても使っていたのでいい印象しかないんですが、現場監督を約8年やってきた経験上、新築しようとした土地に井戸が出てきたりすると、一定数のお客様が購入を後悔する反応をされます

 

トトロの風景のように、昔は井戸がたくさんあったはずなのに、何故いつの間にかこんなに嫌われてしまったのでしょうか?

 

 

古民家リノベーションをした我が家にも既存の井戸があり、『井戸、おもしろいじゃん!』というだっくんの一言から残すことにして日々使っています。

 

この井戸がすごく便利で、そして防災の観点からもとても優れていると感じました。

 

いつの間にか災害大国となってしまった日本で、これからこの“井戸”が防災面で大活躍するのではないかと密かに、しかし割と本気で思っています。

 

 

 

日本で暮らす以上災害は避けられない

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日本で暮らしていると、毎年のように『過去最大級』『史上初』という枕詞がついた災害のニュースが飛び交い、被害の大きさもどんどん更新されていく感覚があります。

 

言わずと知れた地震大国ですし、異常気象による猛暑や大型台風なんかも記憶に新しいところです。

 

今や災害は避けられないもの

日頃からしっかりと備えておくことが大切なのです。

 

 

災害対策への意識は向上している 

そんな災害の多い昨今、私たちの防災に対する意識は向上しています。

 

住宅業界で働いていると、業界内ではここ数年急激に「レジリエンス」という言葉が飛び交っています。

 

レジリエンスとは、様々なリスクや緊張(ストレス)、衝撃に対して対処する能力のことで、様々な分野で使われる言葉ですが、災害の観点からは「対応力」「回復力」という意味で使われます。

 

要するに、災害が起きた時、素早く回復して通常の生活を取り戻せるようしっかり備えよう、という考え方です。

 

具体例としては 例えば電気を太陽光発電で自家発電して、さらに蓄電池を搭載して有事の際に夜も自宅でいつも通りに過ごせるようにしよう、というもの。

 

業界で働いていていても、10年前は蓄電池を搭載する家なんて100件に1件あるかないかくらいだったのですが、今はその10倍くらいに増えていると感じます。

設備の初期費用も安くなっていくと思うので、これからもっと増えていくでしょう。

 

 

昨今、住宅の耐震性能が向上してきたこともあり “避難所に避難するより自宅にいる方が安全”という考え方も新築住宅ではよく耳にするようになりました。

 

避難所では赤の他人との共同生活を余儀なくされ、プライバシーも侵害されやすく肉体的・精神的な疲労が溜まります。

今年はコロナの心配もありますしね。

 

自宅で過ごせるならばそれに越したことはないので、このレジリエンスの考え方はいい傾向だなと思うのですが、前述した電気のレジリエンスに対して、“水のレジリエンス”についてはあまり進んでいないように感じます。

 

 

過去の災害で困ったことの第一位は『水の確保」

過去の災害について調べてみました。

 

データが古いのですが、阪神淡路大震災のあと、兵庫県西宮市が住民にとったアンケート『震災後、どんなことでお困りになられましたか(複数回答)』によると、「生活用水の確保」が82.5%で1位でした。

 

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生活用水の確保は『震災後、困ったこと』の第一位。なのに、誰も備えていない! | 家庭備災

 

 

 東日本大震災や熊本地震など、その後の大地震の際の集計データは見つけられなかったのですが、体験談として 水の確保に苦労した話は多く見受けられます。

 

 

必要な水の量はどのくらい?

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水に備える大切さはわかりました。

 

では、実際にどのくらいの水を確保しておけばよいのでしょうか。

 

水の確保として、飲料水のことはすぐに頭に浮かぶと思います。

災害時に備えてペットボトルをまとめ買いするとか、ウォーターサーバーのストックを多めに持っておくとか、そういう対策をとっている家庭も多いのではないでしょうか。

 

一般的に災害時に1人が1日に必要な水の量は飲料水として3リットルと言われています。

避難所に非難するとしたら最低3日分は確保したいところなので1人9リットル。

 

これは最低限確保しておかなければなりません。

 

 

見落とされがちな生活用水も確保を

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飲料水だけでも1人1日3リットルが必要ですが、その他に見落とされがちなのが生活用水です。

 

実際、被災した方で避難所に行かず自宅待機をした方でも、停電や断水によってトイレが使えなくて困ったという方はとても多いです

 

最近の水洗トイレは、断水はもちろん、停電になると水が流せなくなります

 

お風呂は数日我慢できてもトイレは我慢できないから大変だよね

この期間が長期に及ぶと衛生的にもかなり悪いし、辛い状況になるね

 

そんな時に生活用水としてどれだけ水を確保しておけるか、というのが重要になってきます

 

 

旧式のトイレでは1回流すのに約12リットル、最近の節水型トイレでも約4リットルほど使います。(大だと+2リットルは必要かと)

1日トイレに5回行くとして、20〜25リットルは必要になる計算です。

 

これが家族人数分必要になるので、4人家族なら1日80〜100リットル以上必要になる計算です。

相当な量ですよね。

 

よく聞くけどお風呂の浴槽に水を溜めるのも防災上かなり有効な手段だよね

でも浴槽いっぱいで200リットルくらいなので、4人家族がまともに過ごそうとすると3日も持たない計算になるね

 

 

 

生活用水の確保に井戸を活用する

そこで見直したい「井戸」。 

 

我が家にもあります。

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いつからあるのかは不明ですが、今は電動ポンプでくみ上げられるようになっていて、蛇口をひねるだけで普通の水道と同じように水が出ます。

 

電動ポンプなので停電時には動きませんが、蓋を開けて手動で水を汲めば半永久的に水を確保し続けることができます。

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もちろん、地震等で一時的に濁ったり、場合によっては枯れてしまうこともありますが、これまでの災害時に井戸が活躍したという話はよく聞きます。

 

水質調査をして基準を満たせば、飲料水としても使えますし、そうでなかったとしても生活用水として水が確保できるかできないかはかなり大きな違いです。

 

 

実際に“防災井戸”として登録管理をしている 自治体もあるなど、有事の際の備えとして、井戸は大いに期待ができる存在なのです。

 

それでも井戸は嫌われがち

それにもかかわらず、新しく購入した土地に井戸があると、多くの人が嫌な反応をします。

 

理由は3つ。

 

理由①地盤の強度の心配

ひとつは、地盤の強度を心配するから。

 

井戸があるということは井戸水が豊富ということで、地盤がゆるい可能性があります

そして井戸を掘っているため、物理的にも土の中が空洞になっているわけなので、万が一崩れたら…と心配になるわけです。

 

しっかり人工的に固められた井戸ならばまだ大丈夫なのですが、かなり古い井戸だと土管がハマっているのは上の方だけで、下は土のまま、なんてことも。

 

その場合、長い年月をかけて井戸水が土を侵食し、思わぬ広さまで井戸の空洞が広がっているなんてことも考えられます。

 

たしかにこれは不安になります。

きちんと調査をした上で判断したいところですね。

 

理由② 心理的な不安感

もうひとつは、心理的なもの。

 

日本では古くから“水神様”という言葉があるように、水に対して神聖なイメージがある一方、ホラー映画などの影響か、死者の魂がそこに宿り、それが悪質だと呪われる、というようなマイナスのイメージが強くあるようです。

 

実際、わたしが仕事上で対応させて頂いたお客様のうち、井戸が新たに発覚すると「怖い」という感想を述べられる方が多く、「残す」という選択肢を選んだ方は1割もいませんでした。

 

そう。

ほぼ全てのお客様が、埋め殺してしまっているのです。 

 

そしてさらに、この“井戸を埋める”という行為が、水神様を埋めるというイメージから心理的に受け入れられづらい点でもあるのです。

 

理由③金銭的な問題

現実的なことを言えば井戸を埋めるにしても残すにしても、お金もかかります。

大きさにもよりますが、埋める場合、どんなに安くても15万円以上はかかります。

 

お祓いを呼んだりすれば、その費用がかかりますし、場所が悪ければ地盤改良の金額が増えてしまうなんてい恐ろしいことも

 

 

また、逆に井戸を活かしてポンプを設置する場合、電源の確保やポンプ代として、こちらも15万円ほどは必要になります。

 

どちらにしてもお金がかかるので、嫌な顔をされてしまうことが多いのです。

 

 

防災以外に井戸を残すメリット

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いつのまにか“厄介者”扱いされるようになってしまった井戸ですが、今なお、多くの場所に眠っています。

 

田舎だけではなく、実は都内でもたくさんあるんです。

実際仕事でも解体してみると2割くらいの家に井戸が出てきました。

 

そして見つかった井戸を幾度となく埋めてきました。(お祓いはしてます)

 

 

都内は敷地が狭小なことが多いので、残したくても残せない位置にある場合もあり、仕方ないとは思うんですけどね。

 

それでも残せるならぜひ、残すことも検討してみてください。

前述した防災の観点以外にも、日常的使いにもメリットがあります

 

水道料金ゼロ円で水が確保できる

まず、井戸の水道料金はゼロ円です。

汲み上げにポンプを使う場合は電気代がかかりますが、手で使う分には完全にゼロ円。

 

水質調査をして規定を満たせば飲料水としても使え、相当な節約効果が得られます。

 

飲料水として使えなかったとしても、庭の水撒きや汚れた靴や作業着の水洗い、子供のプールなど、日常生活でも大活躍します

 

温度が一定で自然の水質

井戸水は比較的一年中温度が一定なので、そういう意味でも生き物を飼っている方には使いやすい水のようです。 

めだかの水替えの時にカルキ抜きをしなくていいから助かる!

 

 

井戸がない時の水の備え

ぜひ井戸を積極的に残して欲しいと書きましたが、実際問題井戸がない家や、都内の狭小敷地では間取りの都合上残したくても残せない場合も多くあります。

 

災害時の水の確保として井戸は確かに有効ですが、ないお宅では、災害時にお風呂に水を溜めることもそうですし、貯湯式の給湯器を採用して生活用水を確保するという方法もあります

 

 

おわりに

せっかく自宅の耐震性能を上げ、避難しなくても過ごせるようになっても、水の確保ができなければまともに暮らしていくことはできません。

 

そして必要な量の水を日頃から確保していくためには、重くて場所をとります。

 

井戸はその中でも有効な手段ですが、形はどうであれ、最低限自分のことを自分で守れるように、しっかりと対策をしていきましょう



 

今週のお題「もしもの備え」